忘れえぬ君 4

10、忘れっぽい男

「外、すごい雨だぜ?陛下が降雨量の調整でもしてるんだろうか。とりえず、タオルくれ、タオル。」
裏口から入るなり、注文をつけた俺に、真っ白なタオルが勢いよく頭から被せられる。
「どーも。」
相変わらずのぞんざいな仕打ちに嫌みっぽく言ってやって、俺は頭を拭いた。
「もう、来ないと思ってました。」
呟くように言われ、
「なんでだ?これ、俺のために用意してあったんだろ?」
タオルの端をひょいと持ち上げてやる。そもそも俺がくると思ってなかったらお前が裏口に待ち構えてる道理がないじゃないか。言ってることが支離滅裂なんだよ、お前はいつも。とぶつぶつ口の中で続けるが、後が怖いので、声のボリュームは限りなく小さめだ。
「別に。貴方に覚えがないならいいんですがね。毎週毎週懲りもせず、貴方の性欲にはホント、閉口しますね。」
後半は聞き捨てならない。
何かひどいことを言い返してやりたい一心で口を動かそうとするが、一気に頭に血が上ってしまい、口がパクパクしてしまう。
「タオルを返してください。ていうかそれ、鯉のモノマネか何かですか?似てませんけど。」
お前を簀巻きにしてコンクリート詰めにしてあれだ!オーサカ湾に沈めてやる!!!いや、生ぬるい!!ゴエモン風呂でシチューにして肥溜めにぶちまけてやるっっ!!
妄想しながら鼻息を粗くする俺に、
「来ないんですか?」
と、先に歩き始めていたリュミエールが振り返った。
「行く。」
思わず素に戻ってしまう。こういうとき、脊髄反射で返事をするように躾けられている我が身が恨めしい。家庭でも学校でもそうだったしな、俺の場合。

いつものように、寝室に招き入れられ、俺は服を脱ごうと、ベッドに腰を降ろした。どうせ、脱がなければ脱げと、ベッドに行かなければ行けと言われるのだ。だったら自分から行く方がマシだ。俺はそういう結論に達していた。
濡れて肌に張り付くシャツのボタンに俺が手をかけようとすると、リュミエールがタオルを持ったまま近づいて来て、それを頭にもう一度ばさっと被せた。
まさかまた、縛ったり目隠ししたりするつもりじゃあるまいな、と俺が構えていると、
「じっとして。」
低く優しげな声が上からかかった。この声にいつも俺は不意を突かれて来たのだ!と、なおも構えていたが、髪を、タオルの上からわしゃっと掴まれて、俺は身体の力を抜いた。
なんでされるがままになったのだろう、とぼーっと考えていると、湯殿で、エヴァが髪を拭いてくれるときと、やり方が一緒だからだ、と思い当たった。
気持ち良さに任せて、そのまま目を瞑っておとなしくしていると、髪が拭きおえた指が、耳の中まできゅぅと拭いていく。自然に顔が上向きになる。
それを合図に目をパチッと開けると、そこにリュミエールのドアップがあった。しばらく、お互い無表情に向き合っていたが、
「お前、なんか変じゃないか?」
と、ぼそっと自分が口にしたのをきっかけに、段々言い知れぬ恥ずかしさが込み上げて来た。なんかムード的に。あれだ。なんというか。
リュミエールは、そんな俺に構うつもりもないらしく、大仰にため息をついて、ぽい、と濡れたタオルをベッドに投げた。
「変なのは貴方でしょうに。」
と、突然床に立膝になり、俺のシャツのボタンに手をかけた。
「おい?」
俺が声をかけてもまるで無視。リュミエールの旋毛を凝視するが、やはり答えはない。
「おいってば。」
その肩をびしばし叩く。その間にも、どんどんボタンは外されていく。
「静かにしててもらえませんか。」
いつもは、脱げだのベッドに行けだの誘えだの、色気が足りないだの言うくせに・・・。あ。わかった。そういうこと?
「これって、何かのプレイ?」
かなり解答に近いラインを突いたんじゃねぇかと、思わず口に出すと、
「・・・黙って。」
今度は鋭い視線と共に、怒気を含んだ声が発された。正直、こいつのこういう顔、苦手。いや、全部苦手だが。
全部ボタンを外し終わると、リュミエールは腰をあげ、俺の髪の生え際に唇を落としながら、シャツを俺から剥いでいく。こういう、啄むようなやつ、最近誰かにされたよーな・・・となんとはなしに思いを巡らせて、リュミエールの養父の前で抱かれた日を思い出した。
その一瞬で、カッと一気に身体が上気するのが自分で分かった。反射的に、立ち上がってリュミエールをひき剥がそうと試みる。
「や・・・ばい気がする。なんか。やめようぜ、コレ。」
手首をぐっと握りこまれて、引き留められ、俺は泣き言とも思えるようなことを口走った。
そのまま、とん、と露になった胸の真ん中を指先で突かれ、どっと、俺は後ろに倒れた。なんていう流派なのかしらないが、本気でリュミエールのやってる武道を調べた方がいいと、いつも思ってそのままになってる俺は、いとも簡単に一瞬、脱力させられる。
ひょい、と俺の腰を軸にするようにして両足をベッドに持ち上げられ、リュミエールは自分の着込んでいた布を一気にバサッと脱いだ。なんなんだ。今日のこれは何プレイだ。
若干自分でもズレていることに気づきつつも、思わずにいられない。先週むちゃくちゃされたときより余程怖がっている自分がいる。
「いつも脱がないのに、何故脱ぐのかって?」
能面のような無表情に、俺が声も出せずにコクコクと何度も頷くと、
「わかりませんよ。私にも。」
そのままどさっと全体重をかける勢いで覆いかぶさる。奴は下着一枚で。俺は下半身だけ服を着て。
一体何をされるんだ!!と、俺はパニックをおこしかけていたが、ぎゅっと目を瞑って、暫く待っても何も起こらない。おそるおそる、片目をあけると、あけるのを待っていたかのように、リュミエールの舌がちろり、と目尻を拭った。愛撫というより、獣が傷をなめるような感じだ。意味がわからん、と俺は両目を開けて、リュミエールの目を見た。
暫く、リュミエールはまじまじと俺の顔を眺めて、
「まるで。壁画に出てくる神様みたいに。」
と、意味不明のことを棒読みで言った。かと思うと、ふん、と鼻で笑って、俺の顔の横でほお杖をつき、
「貴方の目。普段は別に大したもんじゃないですね。」
と宣う。
「意味不明すぎだ、馬鹿。」
反射的に言葉がついて出た。馬鹿馬鹿しい。こんな奴の考えてることなんぞ、俺に分かる訳がない。
「私の兄は二人とも、とても優しかった。」
何の前振りもなく、今度は身の上話か。いつもするように、その色の薄い髪をしゃらりと前から掻き上げて。
「でも、上の兄は、たまに私のことを、バカ、と笑いながら叱りました。」
相変わらずの能面からは、なんの感慨も読み取れない、が。
・・・俺は仰向けの身体をリュミエールの顔の方向に向けなおした。上に乗っかっていた、リュミエールの白すぎる下半身が、ずるっと滑り落ちる。真似をするように、俺もリュミエールの方を向きつつ、ベッドにほお杖をついた。
「俺は、弟にも妹にも、馬鹿馬鹿、言いまくってやったぜ。仲、いいだろ。」
ふふん、と思わず鼻が鳴る。
「馬鹿馬鹿言うのが仲が良いとは初耳ですが。」
まさに目と鼻のさきにある、その整いすぎて、なんの特徴も見いだせない顔は、唐変木な台詞を吐いて、眉を顰めやがる。
「馬鹿言え。それだけ心を許してるってことじゃないか。」
「その理屈で言うと、貴方は私にも心を許していることになりますが?」
細い眉が意地悪く上がって、その視線は伏し目がちに明後日の方向を向く。馬鹿にしてんだろ、テメェ、相変わらずの減らず口だな、をい。
「それとこれとは別問題だろーが、ば・・・アホゥ。」
思わず件の言葉を回避すると、すかさず、
「今のは馬鹿は心を許している相手に言う言葉でアホゥは違うという理屈ですか?」
嫌みすぎるつっこみが入った。ずりっと、頬を支えていた腕が滑る。
あーそーかよ、俺の根負けだよ、この屁理屈ヤロー・・・俺はベッドにうつ伏せにつっぷして心で項垂れた。
その後頭部に奴の華奢な手が、ぽん、と置かれた。そのまま、よしよし、と髪を軽く梳きながら撫ぜる。
今日のお前は、ホントに変だよ。
その手を好きにさせておいて、心の中で呟く。
と、突然、気持ちのよい、その手がぴたりと動きをとめる。ぐい、と、もう一度向き合う格好にさせられて、その手が事務的ともいえる動きで、そのままかちゃかちゃと俺のベルトを外しにかかる。
おいおい・・・その顔を見るも、まだ能面は健在だ。どうやら俺のベルトとズボンに集中していて、俺そのものは眼中にないらしい。
「をい、するのかよ・・・」
俺がたじろぎつつも剥かれていく下半身から視線をそらしつつ、口にすると、奴はふい、と顔を上げて、
「え?しないんですか?」
などと急に驚いた顔を寄越す。能面を急に崩すな。こっちが吃驚するわ。
つーかこっちはそれが目的で来てるんだ。だめって事はないだろーが、なんつーか、なんつーか。さっきのさっきでそれかよ・・・。
こういう会話が、あまりにも普通っぽいせいか、自分が女性とする時と比べてしまって余計恥ずかしい。女性とする時に、こういう恥ずかしさがないのは何故なんだろう。自分が能動的に動くからか?そもそも今までこういう行為を恥ずかしいことだなんて思ったことないしな・・・
「何を、眉間に皺寄せてブツブツ言ってるんです?」
前髪を、すい、と触られてビクっと俺は目を開けた。服を脱がし終わって、というかそれどころかいつの間にか自分も全裸になったリュミエールが俺を仰いでいる。
照明をリュミエールの髪がきらきらと跳ね返して、急な光量にほんの少し、目が眩む。
細めた目を戻そうとしたあたりで、あご先をペロリ、と舌先でなめられる。犬にされてるみたいだ。そのまま後頭部をやや乱暴に引き寄せられ、耳も。
「・・・ん。」
しまった、油断し過ぎだ。反射的に身体を後ろに反らそうとするが、後頭部から背中に降りてきた手がそれを許さない。若干もがき気味になる俺に構わず、舌先が、耳から輪郭を通って、あご先、喉と走って行く。
と、舌先の動きを追うのにいっぱいいっぱいになってたところに、すいぃ、と背骨のラインの上を指先でなぞられて、身体がいつもより過剰に反応する。
「ふっぁっっっ・・・・」
くそ、一体なんだというんだ。恥ずかしすぎる。いつもの10倍増で恥ずかしい。
「こうしてると、なんだか私が貴方を抱いてるみたいですね?」
冷静な声が俺の胸のあたりで呟く。呟かれた俺の方は恥ずかしさで憤死しかかっていた。実際抱いてるんだろーがっとは思うが、おそらく格好が、抱き締めているように見える、という意味だろう。恥ずかしいこと言うんじゃねぇ。
恥ずかしいのは、裸で、抱き締められているみたいに、いつも布越しの腕や肩が。折につけ俺の肌に直接触れるからだろうか。まるで・・・これでは・・・
「私は・・・貴方が嫌いです。オスカー。」
唐突に。思いつきかけたことを、きっちりひっくり返す台詞を鋭い視線とともに、投げかけられ、俺は些かほっとしていた。いつものように、上から四つ這いにのしかかられながら、両手をやつの掌と、体重で固定されながら、俺は真上に構えたその顔を見つめ返して、吐き捨てるように言ってやる。
「知ってるさ。俺もお前が大嫌いだ。」
サラサラと、細く長い髪が俺の耳を嬲る。
「貴方のその眼が、虐げられて、嫉まれて、疎んじられて、光を失う、その時がみたい。」
いつもながら、嫌われ方も半端ではない。瞳を反らした方が負け、とばかりに眼を飛ばされて、俺はそこから目を反らさないように、睨んだ。
「ぐっぅ!」
突然、乳首を爪先で抓られ、痛みに一瞬目が細まってしまう。いつものお前らしく、なってきたじゃないか。目を反らしては駄目だ、とギリギリとそこを抓り上げられる中、俺は必死にやつの瞳孔を見つめることに集中した。
「欲情や快楽に潤んでも、痛みや羞恥に屈しても。そんな時のことなど、まるで覚えていないかのように、私を見つめ返すその目が。光を失う時を。」
「・・・ぅ。ははっ!悪かった・・・な、覚えが、悪く・・・てっ!」
出来る限り挑戦的に言ってやる。
そうやって、いつも憎み合う方法のひとつみたいに。俺はこの儀式を済ませてきたんだ。早くすっきりさせてくれよ。どうせ・・・
「どうしたら、いい。」
突然、丸く見開かれた目を、苦しげに歪め。絞り出すような、狂おしげな声で、あいつは言った。驚きのあまり、俺の思考はそこで、ぷっつりと音を立てて途切れた。
「なん・・・て?」
とそれまでのやり取りも忘れて、間抜けな聞き返し方をしてしまう。
それに答えるかのように、奴の舌が俺の目尻を、またチロリと、擦る。そのまま、その舌は唇に落ちて、上唇の先をペロッと嘗め、軽く触れるだけのキスをこれでもか、とゆっくりとされた。唇が離れるのをまってゆっくり目を開けると、目の前に奴の瞳があって、一瞬ギョッとする。その瞳はあの、瑠璃色の惑星そのものだ。
「ん・・・」
次に降りて来た唇に、少しだけ、吸われる。それは繰り返される度、濃厚さを増していった。なぜだか、自然に、その舌の動きに俺も応えてしまう。
「ふっ・・・ぅ」
息が継げないほど、長く吸われて、互いの呼吸がだんだんと、獣地味たものになる。俺の掌をただ上から押さえ付けていた奴の指が、ギュっと俺の指に絡んで、高まった体温を伝えてくる。
舌は一通り俺の口内を散策し終わると、外に出て、項、鎖骨、そしてさっき抓り上げられた乳首を吸い上げる。チリチリする痛みの残骸と、舌先で舐り上げられ、唇で吸われる感触とで、思わずかん高い声が上がる。
「あぅ!っぅっ」
だめだ。まただ。なんだこの、追い詰められる感じ。目尻にうっすらと溜まった涙を舌で拭われて、俺は自分の中の何かが、この男に削り取られて行くのを感じていた。
奴は、俺の両手を自由にすると、両足の間にぐっと身体を滑り込ませ、肩を使って、左足をかつぎ上げた。自分より細く、白い身体にかつぎ上げられる自分を、俺は直視する気になれずに目をそらす。
見えないはずの、奴の視線が熱く突き刺さるようだ。こういう体勢になると、俄然こいつは、熱っぽい目をしやがるのだ。
ぐっと顔を近づけて、俺の身体を折り畳むと、唾液で濡らした2本の指が、つぷ、とその入り口を侵す。
くそ。何度やってもなれねー・・・そこに、ちりちりと痛みが走り、俺はそれに耐えることに集中した。
「ここも、忘れっぽいのは同じようですね?」
酔ったように、首をふらり、と傾げて、俺の視界の隅に顔を近づける。じりじりと、ゆっくり、進んで、あるところまで入ると指がきゅ、と中で曲げられる。
「あぅっっ」
突然、じん、と痺れがやってきて、痛みが和らぐ。
「私はちゃんと貴方を覚えているのに?」
指先で円を描くように刺激されて、俺は自分の内部が激しくうねるような感覚に襲われる。身体が断続的に撥ねるのを抑えられない。
その、刺激が止むのを待って、
「いつもは・・・どこでしたっけ、とか抜かしながら、さんざん、いたぶってたくせに、あれ、やっぱ演技・・・ハァッ・・・か、よ」
恨み事をぶつける。
「そうでしたっけ?」
「んんっっっ!!!っぁぁああああっっ!!!」
そこを集中的に責められて、耐え難い快感が背筋を一気に抜ける。
「もう、私を思い出してくれたみたいですよ。こちらのヒトは。指に吸い付いてくる。」
耳元で実況されて、
「こんなのは、ただのッ・・・せーりっゲンショゥッ・・・そ、だろ?」
残っていた理性をかき集めて、反論し、それを証明してやろうと、俺は出来るだけ力を抜いた。それに合わせるように、奴はクルッと、中で指を回転させて、もう一本追加する。ズッっと一気に奥まで突かれて、身体が大きく一度、ビクン、と撥ねる。
「そう。お互いにね。」
と、言葉と裏腹な熱い視線で、じっと瞳を捕らえられた。その指が出し入れされる度、中が勝手に締まる。焦って力を抜こうとするが、まるでそれが奥まで自ら誘っているようにも思えて、俺は何をどうしたらいいのか混乱し始めていた。
さんざん指で内部を擦られ、すっかり身体が疲れてきた頃に、すっと指が抜かれ、より熱いものが入り口に当たった。さっきまで後ろを弄んでいた指が、前に回されて、きゅっと根元を握り込む。
「はっ・・・はっ・・・」
息を整えつつ、乾いた口内を潤しつつ、ちょっと待て、頼む、と言おうとしたタイミングで、逃げかけた腰を掴まれ、ジュッと奥までたたき込まれる。さんざん嬲られた入り口はさすがに痛まないが、あまりに奥まで一気に貫かれて、俺は危うく気を失いかけた。
「あ・・・ふ・・・?」
意味不明の音が口から漏れ、涎が口から溢れる。目の焦点が合わない。
落ちる、墜ちる。・・・堕ちる!!
「リュミエーーッルッ!!!」
訳の分からない感覚に揉まれて、知らず、俺の手は、何か掴むものを探して宙を掻いた。と、ぐっとその手が熱い掌に包まれ、暖かい場所に誘導される。俺は、そこにギュッと爪を立てて、何かに流されかかっている己を保つことにした。
「動きますよ?」
ぼんやりとリュミエールの声がする。
そんなの、いつも確認しないくせに。今日は・・・

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いつもここでは寝ないように、気をつけてるっつーのに、今日は不覚にも気を失ってしまい、気づいたらもうとっぷり日が暮れていた。オリヴィエ、先週の今週だから、心配してんじゃねぇかな・・・
すっかりシーツに馴染んでいた身体を、無理矢理ベッドから引きはがす。起きてから、暗い部屋の中、ぼうっと白く浮かぶ物体が隣に寝ていたことに気づいて、俺は目を凝らした。驚いたことに、この館の主も素っ裸のまま、未だ寝こけているのだった。
その裸体と、乱れて俺達の身体に絡んでるシーツから、数時間前の自分たちを思い出して、俺は一人、図らずも赤面してしまう。
いつも一回でちゃきっと終わるくせになんだったんだよアレは!!この、ケダモノ。一体何回イキやがる。俺だって、三回目からは相手のこと気遣ってしたくても我慢するんだぞ、フツーは!!
って、こいつは俺のこと嫌いだから気遣わなくていいのか・・・
んー・・・
ガシガシと頭を掻く。平日みたいに高くはしていないが、一応固めてきた頭だったのに、整髪剤が雨と、取っ組み合いと汗で流れて、すっかりぺちゃんこになっている。きっといい男が台なしに違いない。前髪を摘まんで、ちっと、舌を鳴らしたところで盛大に腹が鳴った。
ぐきゅるるぅきゅるるぅぅぅぅぅ!
いくら腹が減ってるからって、何もそんなにファンキーな鳴り方せんでもいいだろう、と俺が腹を窘めていると、
「サイドテーブルに。サラダ、ありますよ。」
と、隣の裸体がしゃべった。お前起きてたのか。
それはともかく。腹が減りまくってるいるのだ、俺は。どこだどこだ。サイドテーブル・・・
暗闇の中をサイドテーブルのあった方角ににじり寄る。リュミエール。邪魔だお前。
カチ。
音がして、ベッドのフットライトがついた。若干明るくなって、サイドテーブルとその上のサラダ、グラスに入った水が目に入った。おおー食い物だ!!ってちょっと待て。
「これまさか、誰か部屋に来たって事か?」
俺とお前が素っ裸で寝ているこの部屋に?
「まさか。部屋の前に届けさせて、それを私が回収したのですよ。」
リュミエールはうつ伏せに寝たまま答えた。語尾にバーーーカ、とついていたような気がするのは、俺の考え過ぎということにしよう。
サラダのラップを取り、ついていたフォークで一口。ぱくりといこうと思ったところで、リュミエールが、ぐい、と両手を突っ張って身体を起こすのが視界の隅に移った。
目の端に動くものが移ると、つい反射的にそちらを確認してしまう癖で、そちらを振り向くと、白い背中が目に入った。その細身に抱かれてよがってる俺を俯瞰で見たらさぞ滑稽だろうなと、考えたくないことが頭をよぎる。
「それ、アボガドサラダです。」
と、ふいに、背中ごしに声をかけられ、嫌な思考はふつり、と止む。さっき取り上げた一口を口に放り込みながら、
「ん・・・なんかヌルヌルしてて独特の食感だな。食感はともかく、タバスコかチリオイルないか?」
と、注文をつけた。
「味の分からない人ですね。今度から用意しておきますよ。」
ベッドの上で片膝を立て、髪を掻き上げながら、眉間に皺を寄せてリュミエールが悪態をつく。あのなー。丸見えだぞ、馬鹿・・・
俺は視線をそらしつつ、
「辛いものはうまいだけじゃなくて、健康にもいいんだぜ。しかも俺は料理が得意だ。」
と、フォローを入れる。そうだ。そんな俺に草食動物みたいなお前が味の分からない人とは何事か。ふん、ともう一口、二口を口に放り込む。それをしばらく黙ってじっと見ていたリュミエールが、
「私も。」
と、突然俺の隣に寄って、サラダボウルに手を突っ込む。
「おいっ。汚ないだろーがっ。」
俺が非難すると、手は洗ってます、とそれをそのまま口に運ぶ。いや、そういう問題か?
奴は、俺の顔先で、自分の指の先についた、アボガドを丁寧に舌先で嘗め取っている。なんだか、見ていてはいけないよーな、と俺はぷいと顔をそらし、目の前のサラダボウルに集中することにした。
何かを振り切るように、ばくばくと、片付けモードでフォークを進めていて、ふと、オリヴィエが夕食と一緒に待っているであろう事を思い出して、これを食べ終わったら俺、出るわ。と言おうと奴を振り返った時。
「んーーーーーーーーーっっ!」
アボガドでぬるぬるの唇が、舌が俺の口の中に突然入ってくる。顎をがっちり掴まれて、突っ張りたい手はボウルとフォークでふさがっている。奴は目をかっと開いたまま、無理やり歯列をなぞって遊ぶと、さっさとそれは離れていき、
「クックッククッ」
堪え切れない、というように奴は笑った。
「何がおかしいんだよ。」
フォークで刺し殺したろーか、こいつ、と殺気立ちながら俺は言う。
「いや、確かにヌルヌルしてますね。」
「関係ないだろ、それ。」
俺は顔が怒りで真っ赤になるのを感じた。なんなんだ、こいつは。俺は最中ずっと恥ずかしさに耐えていたことを思い出す。いったい今日のこいつは、なんなんだ!!
「はー。オスカー。貴方、キスする時、目を瞑る癖があるでしょう。」
笑いを堪えて、奴は目尻の涙を拭う。キスする時目を瞑るのはマナーだろ・・・ってこいつにはそんなことしてやる義理はないが。
「瞑らないお前がおかしいんだ、むしろ!」
「でも、驚いた時は瞑らないんです。あと、女性と寝た後は、あまり一緒に寝ない方がいいですよ。貴方、変な癖があるから。」
なんだと?!それは聞き捨てならん!エロい癖か?!
「ど、どんな癖だ。」
「リシア、が一番多いですかね。やたら、複数の女性の名を呼ぶんです。寝言で。」
ウソだろ・・・、と思いたいが、筆頭に上がっている女性に妙に説得力がある。たまに寝起きに他の人の名を間違って呼ぶことはあるが。フェミニストの俺としたことが、なんたる様だ!
「まあ、そんなわけで。」
ポンポン、と奴の左手が俺の頭を二回、軽く叩いた。
「食べ終わったらさっさと支度をしてください。オリヴィエのところへいくのでしょう?」
瞳をのぞき込まれ、ん?と小首を傾げられて、
「言われなくてもっ!」
と、勢いよく立ち上がり、床に転がっていたまだ湿り気が残っているシャツを羽織った。
そんな俺を遠くをみやるように観察しながら、奴は全裸のまま、ベッドの天蓋を支えている柱にもたれながら、着替え終わり際に、いつも俺の背中に投げかけていた台詞を、俺の瞳をしっかりと捕らえて言った。
「次も、土の曜日に。」
「・・・あぁ。」
すれ違い様、いつもはしない返事を小さくして、俺はその部屋を出た。

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11、忘れえぬ、男

そうして、彼は日を追うごとに、めきめきと、自分を取り戻していった。何がきっかけかはわからないが。そしてそれと連動するように、彼には妙な習慣ができた。
その曜日の午後は必ず外出し、行き先は言わない。戻るのは次の日の朝。オリヴィエ様の邸から。

噂好きなものの間では、外に特定の女性ができて通っているのだとか、別邸に女性を囲っているらしい、というのが専らの噂で、その習慣が12週を回ってもまだ続いていることを知ると、自然に、ついにオスカー様、陥落か。という内容に変わった。

そして、彼は変わった。いつもの表情の中に、苦悩や、諦め。遠慮や、戸惑い。いつもの自信満々の笑みに隠れて、そういった複雑な表情が、ごく自然に見え隠れするようになった。一時のように、憔悴しきって、煮詰まっているわけではない。ただ、ごく普通の、悩める男に、彼もなったのだとそう、思う。

オスカー。貴方、今。きっと、ひどい目に会ってるわよね?
私、本当は・・・

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「オスカー様。今日から秘書業務を、この者と一緒にやらせていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。」
書類に落としていた顔をちょっと驚いたように上げて、アイスブルーが私の真意を確かめるようにきゅ、と締まった。
それに気づきながらも、私は、自分の左後方に控えていた青年に合図を送る。よく躾けられたその長身の男は、一歩前に出ると、一度恭しくその漆黒の頭をさげ、
「オスカー様付の秘書を希望しております。リョウ・ムライです。年齢、23歳。生まれは主星。趣味は釣りと、特技は拳法です。」
清涼な声ではっきりと言った。
主は、仕事の手を止め、不機嫌そうに、ふん、と鼻を鳴らして、目を細め、両肘を鷹揚に机に付くと、口元で両手をきゅっと組んだ。
その第一声は、
「男じゃないか。」
だった。
「はい。男です!」
男はその難癖にも気づかず、生真面目に返事をしている。プッと吹きかけて、
「ええ。男ですが。問題でしょうか?」
真面目な笑みに切り替える。
「大問題だ。俺が周りに男なんか一人でも置いているか?」
「ええ。ですからこそ、一人くらい彼みたいなのがいればお役に立つことも多いかと。見た目はでくの坊ですが、拳法などそれなりにできますし、ボディガードにもなります。頭もそこそこ使えますし、私の実姉の血統ですので、身元も安心です。」
そして、思った通りの反応が帰ってくる、その形の良い眉がくい、と片方だけ上がり、
「俺を誰だと思ってる?この俺にボディガードがいるとでも?!」
一蹴された。しかしこれは予想の内。
「失礼ながら。オスカー様にはオスカー様が身体を張って守るべき対象がいらっしゃるでしょう。陛下なり、ジュリアス様なり、そのときの任務の対象者なり。しかし、我々女性の部下ではオスカー様自身を身体を張ってお守りすることなど不可能です。どうぞ、お聞き分けください。」
ぐっと言葉につまって、視線だけをこちらに投げる。しばらく視線の応酬をやって、やがて諦めたように彼はふっと目を逸らして息を吐いた。
「やめだやめだっ。リシアと口げんかで勝てるはずがないからな。」
大きな声で言った後、
「・・・だがそれが恒例になって、職員の半分が男にでもなったらどーすんだ・・・男性職員の福利厚生なぞ俺は知らんぞ・・・」
ぶつぶつと唇をとがらせて続ける。
隣でリョウが笑いを堪えている気配がする。
「このものは異例中の異例、ということで、以後この者のポジション以外、男性は認めない旨、徹底します。それと、この者の福利厚生などほとんど必要ありません。これは私の家の血統は代々女系。女に囲まれて過ごすのは慣れております。」
「結局そうやって押し切るのだからな・・・で、なんで秘書補佐が必要なんだ?如何にリシアの親戚筋とはいえ、俺は無駄な人件費をかける予定はないが。」
来たな、と思わず口の端が上がる。
「はっ。私は、この者に引き継ぎが終わり次第、お暇を戴きたく存じます。」
「暇か。それはかまわんが。いつまでだ?」
ここは、映画のように、ゆっくりと、よ、リシア。
「できれば、ずっとです。オスカー様。」
ガタ、と彼は急に席を立った。やめて。オスカー。あんまり分かりやすく動揺しないで。勘違いしたくない。
「つまり、やめたい、と?」
口元に折り曲げた指が、頼りなく添えられる。その狼狽えっぷりに、何か感じるところがあったのか、
「お・・・私、外で待機いたしましょうか?」
とリョウが気をきかせる。
「いや、いい。」
「いいの。」
返事がハモる。知っているのだ。今、二人きりになって、いいことなど何もないと。お互いに。
あーあ。悔しいなあ、と心に冷たい風が吹き抜ける。
「君が、そういうのなら。とめても、無駄なんだろう?」
縋るような瞳は、年相応に見える。ああ、貴方ってやっぱり坊やだったのかしら。
「えぇ。もう、決めたことです。」
にこっと、営業スマイルを返した。こめんなさい。でも私にはこれでも精一杯よ。
暫し、心地のよい沈黙が私達を慰め、
「私が、その穴を埋められるよう、精一杯頑張ります!」
その沈黙を破って、リョウのとんちんかんなやる気が、私達を勇気づけた。
「さあ、では早速覚えてもらうことだらけよ!今から執務室と聖殿の中を案内するわね。事務仕事と私邸の中での仕事はマニュアルを作ってあるから、それを読んでから自分で挑戦して。わからないところを聞いて頂戴!」
私は、その細長い背中に回り込んでポン、と両手で真ん中当たりを軽く叩いた。
「引き継ぎにはどれくらいかかる?」
ちょっと納得しかねている表情で、でも笑顔を作りながら、彼は聞く。
「2週ほどあれば。」
私は、きっぱりと、期限を伝えた。もう、迷わなくて済むように。
「そういうと思ったよ。それじゃえーと・・・」
「ムライです。リョウ・ムライ。」
「リョウ。飯に行くぞ。付き合ってくれ。」
早速親交を深めるつもりなのだろう。相変わらず、仕事には熱心だ。ばさっと、マントを翻し、先を歩こうとしたオスカーが、何につまづいたのか、クッと倒れかかる。
え?と私が、かけよろうと反応する前に、
「おっと。」
リョウはその長身を活かして、オスカーの胸のあたりを左手一本を前に差し出して支えた。
そのまま、彼が腕を持ち上げるようにすると、オスカーの身体は何事もなかったかのように、ストン、と直立した。
直立したオスカーが、彼の腕に手をかけつつ、じっと、その鳶色の瞳を見上げる。
「お前、背が高いな。いくつだ。」
珍しく、嫉妬心剥き出しのジト目だ。
「18の時、193cmを越えてからは測ってません。無駄に伸びて、困ってます。今は、いくつくらいに見えますか?」
人の良い、本当に困っているらしい顔が、微笑した。
「193cmちょうどくらい。」
吐き捨てるように言うと、
「いいか。今後、俺がこけかけたときは、俺の腕を掴んで起こせ。次に今みたいな事をしたら許さん。特に人前では!!」
と、続け、足早に歩いて扉に向かう。リョウが、気をきかせてその後ろから腕を伸ばして扉をあけようとすると、
「近寄るな!このヌリカベ!!」
と、その手を払って自ら開ける。
強さの守護聖のプライドを傷付けないでね、とお願いしたのだが、頭の出来が悪くないあの青年にもやはり難しいらしい。
悪くないわね、あの二人。と、少し部下として安心して、それから、女として、忘れられない男から逃げる寂寥感を味わっていた。

『私、貴方の良い部下であり続けられると思いますわ。貴方も、私の良いボスであり続けて下さるでしょう?』

そんなに簡単じゃなかった。簡単じゃなかったわよ。
甘いのは、私、か・・・
と、自分のふがいなさを思って、ほんの少し、執務室を借りて、音をたてないように、泣いた。

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「今日で、最後か。」
確認し終わった書類をこちらに寄越しながら、私が今日1万回くらい心で繰り返した台詞を、オスカーが口にした。もうあと一時間ほどで通常の執務時間は終わり。あとは、私は引き継ぎや明日以降の仕事の手筈を確認して終わりだ。
こんなときに限って、さっきまで居た後任のリョウは研究院に使いに出ている。もう戻って来ておかしくない時間だというのに。
「えぇ、それにしても、リョウ、遅いですわね。」
私は見てもいない時計を見る振りをした。
そんな私に気づいているのか、いないのか、オスカーは軽く失笑して、
「コーヒー。頼む。」
と短く命じた。仕事をもらえるのは有り難い。私はさっそくコーヒーメーカーに近寄って、カフェポッドを取り出した。業務も終わりが近い。エスプレッソで問題ないだろう。
準備があっけなく終わってしまい、エスプレッソが落ちている間、所在無く、これまでのファイルの並び順などを確認していると、
「リシア。ごめん。」
と、急に、言われた。聞き違いかと思って、そちらを振り返る。まばゆい夕日が逆光になって、よく物を語るアイスブルーが見えない。
「リシア、ごめん。」
ぴょこっと、今度は頭が下がった。
ゴゴゴ、と場違いなエスプレッソメーカーの音が部屋に響く。
「い、いったい、なんの話ですか。やめてください、そんな・・・」
慌てふためいて自分でも意味不明な言葉が飛び出して行く。
「正直、俺が君にしたこと、何がいけなかったかまだよくわからない。でも、多分、君をすごく傷つけた。だから・・・ごめん。」
狼狽えつつも、きちんと最後まで紡がれた言葉は、最後は、こちらをしっかりと捕らえていた。

突然なんでそんなことを言い出すの?
わからないのに、謝らないでよ。
今更なんで、そんなことを言うの?
ひどい男のままでいてくれなきゃ、アタシが浮かばれないわ。
アタシ、酷い目にあったらいいって、そう思った女なのよ?
お互い、気取ったいやな男と気取ったいやな女のままじゃ、
駄目なの?

何一つ、言えなかった。
次から次に、涙が込み上げて来て。どうしても、この人の前でだけは、絶対に絶対に、泣きたくなかったのに。
「ごめん。ごめんな。」
いつの間に近寄ったのか、ふわり、と抱き締められる気配がして、でも、その直前で、腕はぴたり、と止まった。
不思議に思って、手で覆っていた顔を上げると、
「・・・抱いても?」
ためらいがちに聞いたその顔は、どうしたらいいのか、途方に暮れて、とてつもなく困っていた。
「いいえ。オスカー。有り難う。今まで、酷いことを沢山言って、ごめんなさい。」
誰なの。
「そして、有り難うと、ごめんなさいを、言わせてくれて、有り難う。」
貴方を、そうやって、成長させてくれた人は。
誰なの。
あんなに弱っていた、貴方を立ち直らせた人は。
抱き締める直前で固まっていた腕の中で、私は背伸びをして、オスカーの首を引き寄せ、その目尻に、フレンチキスした。

きっと私、鼻の頭が赤いわ。目が腫れてるわ。化粧もはげかけてるわ。貴方の記憶に残る私は、ビシッとしていて、欲しかったのに。

バンッッ
「リシア姉さん、書類の順番が違うって、研究員の連中が聞かないんだ。マニュアルに書いてあったと思うんだけど・・・」
突然、勢いよく扉の開く音がして、間の悪い青年が書類をバサバサさせながら入って来た。
一瞬、執務室の三人は三者三様にその場に固まり、
「い、いや、これは抱き締める直前で抱き締めていた訳じゃないんだっていうか、お前、執務室に入る時は毎回ノック二回っていってるだろーが!」
「いやおれまだ何も見てません。マニュアル確認します。失礼しましたーーっっっ!!!」
ギクシャクと二人は得たいの知れない動きをした。

「二人ともっしっかりして下さい!!そんなんじゃあ不安で私、切り上げられませんわ!いったい何をつっかえされたの?リョウ、見せてご覧なさい!!」

有り難う。今なら、最後のこの一仕事を終えたら、きっといつか私もいい恋に踏み出せると思える。

本当は、私、貴方をひどい目に合わせる、その人になりたかったわ。
有り難う、オスカー。
そして・・・


終。

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