たまにはこんな日も…




ジュリアスは、光の守護聖として聖地に来てから…定時に私邸に戻った事が1度もない。

幼い頃に聖地に召喚され、クラヴィスと共に過ごした少年の頃でさえ…王立研究院や地の守護聖の図書館などで、遅くまで勉強してから戻っていた。

だからアンジェリークが神鳥の宇宙の女王となり若い力が安定してからも、執務室で少し残って皆が帰るのを確認してから私邸に戻るのが日課だった。


その日もだいぶ遅くに私邸に帰り、何時に主が戻ろうと温かい夕食と快適なリビングを用意してくれる使用人達に礼と挨拶をして任を解いた。

食事を済ませて自室のドアを開けた瞬間、いつもと違うが馴染んだ空気に知らず口元が綻んだ。
疲れているのか寛ぎ過ぎか、あるいは遅い自分を待ちかねたか…淡く漂う白檀の香りを纏わせた幼馴染は、見事にソファでゴロ寝していた。


意外と甘えたなクラヴィスは、こうしてたまにジュリアスの私邸に来る事がある……たいがいは用がある訳でもなく、少し酒を汲み交わせばまたふらり帰って行く。

軽くシャワーを浴びて部屋着に着替え、それでも起きない様子のクラヴィスに苦笑を向けて、ジュリアスは酒の用意をしてから読みかけの小説に目を落とした。


数ページ読み進めた頃、背中から香る白檀と凭れかかってくる重みに気付いたジュリアスは本を閉じ「おはよう」とやわらかい微笑みをクラヴィスに向けた。

クラヴィスは変わらない。…どれだけ大きくなろうとも、忙しいジュリアスを案じ気遣うその仕草は幼い頃のまま…「少し重い」と目を細めれば、まだ眠たげな様子で「ん…」と肩に乗せた頭を少しだけ浮かせた。

後ろから抱き締められているような体勢のまま、ジュリアスはクラヴィスにグラスを渡し、月を眺めて2人酒を飲んだ。

無意識に少しずつサクリアを交わし合い、人の身に余る分を中和させるような…穏やかなひと時に助けられているのは、私の方かもしれない……いつも通りふらり帰って行くクラヴィスの背中を見ながら、そんな事を思うジュリアスだった。

FIN.



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